スピカ [17歳][女性] 【ある夕陽の日】 ■■■ そこは、燃えるように赤く、それでいて不気味なほど静謐な、朱色の教室だった。 「…………ん」 寝惚け眼で辺りを見渡す。さっきまで寝ていたせいか、その眩しさに瞳を細める。 少し呆けて、自分が椅子に座って寝ていた事を他人事のように確認した。 「……あ」 机に広がる数学の教科書を見て思い出した。 私は明日の中間テストの勉強をしてたんだ。全く、テスト勉強をしながら居眠りするなんてどうかしてる、と頭を振る。 「やっと起きたのかい」 「えっ?」 まるで頭上から降ってくるような、そんな男の声を聞いた。 辺りを見渡す。誰も居ない。 「誰も居ないよ。私はこの教室に仕掛けられた監視カメラで君を視認して、それを介して音声を伝えてるだけなんだ」 「……なんでうちの教室に監視カメラがあるのよ」 さあね、と男は含みのある言い方で答えた。 胡散臭い。というか教室に監視カメラだなんて。もしかして、まだ夢でも見てるのだろうか。 「とりあえずまあ、起きたんだから質問に答えてほしいな。名前はなんていうんだい?」 「……竹内渚」 「素直でよろしい。では本題に入ろうか」 本題? と私は私は頭をかしげる。 「うん。単刀直入に言うとね、君から買い取りたいんだ」 「買い取り?」 そうだよ、と音声越しなのに、何故か頷いてそうな雰囲気で言った。 「僕はね、他人が興味のない物にでも興味が出てしまう質でね、その数学の本に、君が居眠りして出来た跡に興味があるんだ」 「へ?」 「指紋や涎、顔の皮膚の跡。それがびっしり刻まれたのに興味がある」 「……へんなの」 はは、と人懐っこく男は笑った。 「うん、自覚してるさ。だからそれを売ってほしいんだ」 はあ、と私は溜息をつきこう言う。 「……教科書って意外と高いんだよ?」 「ああその点は大丈夫。買い取り値段は1000万でどうだい?」 「1000万……!?」 もうちょっとで頭大丈夫? と言ってしまう所だった。だって1000万! 教科書の値段の比じゃない。 「もしかしてお金持ち?」 「他の人よりはね」 「はあ……」 私はどこかにあるんだろう監視カメラを見つけてやろうと首だけ動かす。結局、監視カメラがどこに仕掛けられているのかは分からなかった。 「でも落書きでもない、なんでもない教科書だよ? 1000万の価値はないと思うけど……」 「いいさ。僕はあると睨んだんだ。で、売ってくれるのかい?」 「そりゃ断らないでしょ」 明日の中間テストの結果なんて、もうどうでもいい。それに智ちゃんにコピーさしてもらっても家買えるくらいのお釣りがくる。 「ちょっと落書きくわえてあげよっか? 猫とか」 「駄目だよ! やめてくれ!」 急に男は声をあらげた。それに驚き、私は思わず「ごめん」と呟いた。 「そのままが一番なんだ。とりあえず契約成立だね」 「うん。でもどうするの? このページだけ欲しいの? それとも教科書全部持ってく?」 ううん、と男は静かに呟く。そして、厳かにこう言った。 「教科書は要らないよ。僕はね、原画が欲しいんだ。手っ取り早く言うとね、君の顔の皮膚と、指を厚さ3cmくらいの深さで削らせてほしいんだ――」 言い終わるのが先か。 言い終わるのが後か。 私がその言葉の意味を理解した時には、もう遅かった。 バタン! と教室の扉が壊れた音が聞こえ、白衣に包まれ男か女か分からないような人達――5人が私を一斉に取り囲み、押し倒した。 「――っつ!」 一人は右手を。 一人は左手を。 一人は右足を。 一人は左足を。 もう一人は――ドラマとかでしか見た事がなかった――メスを携えて。 「―――!?」 そこから意識は混濁していく。 ただ、意識が完全に消失する前。 顔に走った鈍い、けれど鋭い、焼き付くような痛みを感じて、これは本当に夢じゃないんだ――と、本当に他人事みたいに理解した。 ■end■ ▽追記 10/12^16:22[編集] EZ W51S 59.135.38.187 [感想を書く] [最新順][古い順] スピカ [17歳][女性] 和智さん感想ありがとうございます 一人称で進めるか三人称で進めるか悩みながら書いた結果ですね……反省。 感想貰ったし、和智さんの小説も読んで、近い内に感想書きに行きますねー 10/14^00:15[編集] EZ W51S 59.135.38.184 和智 スピカさん、こんばんは。面白い作品だなと思ったので、ささやかながら感想を贈らせてもらいます^^ 起―謎の男の登場 承―変わった提案 転―1000万円の取引の秘密 結―顔を…! ううん、短かくまとめられてますよね。展開もわかりやすくて、ラストには思わずぞっとしました。 文法というと、後は三点リーダーとダッシュくらいですかね? それと、他人目線のような一人称にも少し引っ掛かりを感じました。 > 少し呆けて、自分が椅子に座って寝ていた事を他人事のように確認した。 > 全く、テスト勉強をしながら居眠りするなんてどうかしてる、と頭を振る。 以上です。それでは、失礼します^^ 10/13^20:10[編集] SoftBank 812SH 123.108.237.26 ミステス 返事ありがとうございます。 わたしも携帯からですよ(笑)。パソ持ってないっす。 それから1000万なら、マンションがいいとこですねぇ。車でも300万ですから、一戸建てならローン組まなきゃならんす。 ではでは、これからもご贔屓に。 10/12^18:59[編集] SoftBank 810P 123.108.237.30 スピカ [17歳][女性] 凄いですwこんなに早く批評してくれるとは、(しかも凄い詳しく)思いませんでしたww ありがとうございました氓ワた書いたら、投稿させていただきますね今度は言われた所を直して笑 空白は……携帯で書いてるから面倒なんですよねー(ぇ 家ってそんなに高いんすか……?ww 10/12^18:50[編集] EZ W51S 59.135.38.184 ミステス [16歳][男性] 評価:★★☆☆☆ はじめまして、ミステスです。 何とラ研に通われてようで、こんなサイトをご贔屓にしてくださりありがとうございます(笑)。 ではスピカ様。 「ある夕陽の日」を拝読したしましたので、感想を運びたいと思います。 なるほど、文章力はそれなりにあるようですね。文章作法も、空白を入れる以外はできてますし、第一印象はOKです。 物語は起承転結がはっきりしてていいですねぇ。なかなかに奇抜な転も良し。うん、面白かったです。 ダメなとこは、まぁ主に気になるとこですが……なぜ名前を聞いたのか(これはまぁいいですが一応)。最初の買い取る文章でもう少し『原画』を匂わせて欲しかった。最後に何で渚の意識が混濁したのか、また「夢じゃないんだ〜」が、なぜそう思ったのか微妙。全体的に文章が気になるという点ですね。 まずはここまで、内容は15点です。以外、細かく。 ◇文章について >そこは、燃えるように赤く、それでいて不気味なほど静謐な、朱色の教室だった。 赤くと言ってるのに朱色と言ってるのが疑問ですねぇ。静謐を挟んで前半後半は同じような描写ですし、どっちかを削った方がよいかと。わたし個人的に直すなら、 『そこは、不気味なほど静謐な、それでいて燃えるような朱色の教室だった。』 ですかね……。あんま変わってない(泣)。すみません。 >寝惚け眼で辺りを見渡す。さっきまで寝ていたせいか、その眩しさに瞳を細める。 ここも上と同じで、同じような表現を繰り返してます。わたし個人的に直すと、 『つと辺りを見渡す。さっきまで寝ていたせいか、窓ガラスから射し込む夕陽が眩しく、反射的に瞳を細める。』 かなぁ……(不安)。こんな感じです。 >少し呆けて、自分が椅子に座って寝ていた事を他人事のように確認した。 「呆ける」とはぼんやりするという意味なので、ぼんやりして確認するは微妙です。むしろ覚醒して確認するのが普通かと。だからこの場合、 「ぼんやりしたまま〜(中略)〜確認した。」 の方が適切かと。 >「……なんでうちの教室に監視カメラがあるのよ」 細かいですが、「うちの」は必要ないと思いますー。 ≫言葉を地の文にする。 ふむ、うまい使い方ですね。ですが、ちょっと鬱陶しいですね。これをやるたびに一端流れが途切れるので、もう少し抑えた方がよいかと。 >「僕はね、他人が興味のない物にでも興味が出てしまう質でね、その数学の本に、君が居眠りして出来た跡に興味があるんだ」 ここが伏線になるのですが、もうちと『原画』を匂わせて欲しかった。 >私はどこかにあるんだろう監視カメラを見つけてやろうと首だけ動かす。結局、監視カメラがどこに仕掛けられているのかは分からなかった。 句読点が多いスピカ様の文章の中では、ちょっと浮いてる気がします。 >それに智ちゃんにコピーさしてもらっても家買えるくらいのお釣りがくる。 さすがに家は買えねー(笑)。マンションなら(ぇ。変なツッコミすみません(汗)。 ★さらに追記に続く……★ ▽追記 10/12^17:55[編集] SoftBank 810P 123.108.237.25 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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