お手軽投稿室〔感想〕

和智

[17歳][女性]
【緑の獣】

 ただいまと言ってドアを開けると目の前に緑の獣が立っていた。ドアノブを掴んだまま硬直する晶子に、緑の獣はくちゃりと口角をあげた。
「おおか、えりにさい」
 腐りかけた水銀のような、妙な響き方のする声である。てらてら光る鱗は晶子の最も嫌う爬虫類のそれだった。一歩後ずさると、獣は慌ててかぎ爪のついた指を広げた。
「まつて、まてくだし。何にもわわりいこと。ないいんです」
 必死の姿である。晶子の視線がその黒々と鋭い爪に注がれているのに気付くと、害がないことを示すようにすぐさま引っ込めた。
「わつちはただ、ただあんんたに」
 獣は縋るように晶子の腕を掴んだ。小さく悲鳴が上がる。
「――晶子さんにい会いとうだけだつよ」
「どうして名前を知ってるのよ」
 晶子は再び声を裏返して叫んだ。必死に腕を振り払う。「離して」
 途端に、獣は小さな真ん丸の目玉を潤ませた。しばしばとまばたきして、大粒の黄色い涙が零れた。
「わつちはきらいいですか」
「嫌いよ、嫌い。潰れて死んでしまえばいいわ」
「あああ。ひどい、ひいどい。わつちを覚えては、いませんのんか」
「知らないわ、いやよ離して、腕を!」
 ぱっと獣は腕を離した。よろけた晶子を悲しそうに見つめ、ため息だろうか――薄紫の細い煙をはいた。
「あいわかりんした、わかりいんした」
 ゆっくりと首を振り、緑の獣は小さく体を縮めた。「わつちはあ消えまうし」
 どろりと腕が溶けた。頭、背中、尾と順々に。すっかり形がなくなってしまうと、今度はフローリングに染み込んでいった。晶子がまばたきをした次の瞬間には、もうそれさえも消えていた。
 腰が抜けたのか、晶子はへたりと座りこんだ。
「何、なのよ」
 かすれた声がもれた。今もまだ、体が震えている。ぎゅうと自分の肩を抱きしめ晶子は夫の名を呼んだ。
「早く、帰ってきて」
 ドアノブを回す音がした。晶子はぱっと顔を明るくし、振り向こうとして、気付いた。
 自分の腕を覆い始めた緑の鱗に。
 晶子は悲鳴を上げた。ゆっくりとドアが開く。その向こうにある影を、彼女はまだ見ていない。



▽追記

10/13^16:49[編集]

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SoftBank 812SH 123.108.237.9
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ミステス


どぞどぞ^^

感想人になってくれるなんて、嬉しい限りです。

これからもよろしくお願いしますねq(^-^q)

10/13^20:03[編集]

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SoftBank 810P 123.108.237.9
和智



晶子は美人だけれど心根が醜い、という人物にしていたんですが、ここも描写不足ですね。精進します!


はい。皆さんの作品が素敵過ぎて、何度も読み直してしまいます(ストーカーめ!)
多分ログがすごいことになっているだろうな^^;
カウンターを無駄に回しているような気分、なんだか申しわけないです。どうかお気になさらずm(_ _)m

かかか感想を入れてもいいんでしょうか…!(焦)
とてもそれがしたくてうずうずしていました、嬉しいです^^*


こちらこそ、よろしくお願いします^^


10/13^19:54[編集]

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SoftBank 812SH 123.108.237.30
ミステス


作者レスありがとうございます!

なるほど、全部晶子でしたか(笑)。全然分かりませんでした。

となると晶子が醜いというのが、表現不足になると思います。⇔伏線


他の作品に感想書いていいので、よろしかったら(笑)。

ではでは、これからも何かあればよろしくお願いします(^-^)/

失礼しますー。

10/13^19:30[編集]

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SoftBank 810P 123.108.237.25
和智



ミステスさんの対応の早さに嬉しく驚きつつ、こんばんは、和智です。



> 村上とは……村上春樹氏……または村上 龍氏のどちらかでありましょうね。

はい、春樹さんです。今回は文体にも影響がきている感ありありです。


> 文章自体に何かすごく不安定なものを感じます……。起承転結ははっきりしてますが、結が微妙――いやむしろ何があったのか、その全権を読み手に投げ出しているので、ちょっと分かりかねます。

スパッと切って終ろう! と思ったのですが逆効果だったかな、確かにこの締めかたは不親切ですね。ラストを想像してもらうのがメインでしたが、ううん。伏線が足りないのが原因?


> 「おおか、えりにさい」
 緑の獣の言葉は、はっきり言うと不快で、わたしの肌に合わない感じです。

気味が悪くいらいらする印象を持たせたかったので、ある意味では成功かな。でも肌に合わない不快感というと、ううん。
後半でボロボロ泣く獣に憐憫を感じてもらえたら万々歳なのですが。


> 「あああ。ひどい、ひいどい。わつちを覚えては、いませんのんか」
 んー……元彼という線がわたしの中には存在しますが、緑の獣が何の具象であるか認知できない以上、推測の域を出ませんからね……。

緑の獣は、晶子自身です。彼女の醜さを具現した姿の怪物であり、当然受け入れてもらえません。
元彼ですか、ううん「私を覚えていないのか」より「私がわからないのか」のほうが良かったかな。
「あなたに会いに来た」とも言っていますしね。これは引っかけでわざと入れたんですが、逆効果だったかもしれませんね。


> その向こうにある影を、彼女はまだ見ていない。
 むう。いったい何がいるか気になる。わたしの読解力では作品の根幹を理解できなかったです。申し訳ない。

ドアの向こうに入るのは夫ではなく、また別の晶子です。(何人でてくるんだ!)
緑の獣となった晶子は、自分自身に受け入れてもらおうと再び同じことを繰り返す――、というオチになります。
結局登場人物は実質は一人だけ、という。なんとも手抜きですね(汗)

自分では分かっているつもりでも、なかなかきちんと伝えるのは難しいですね。言葉の足りなさを実感しました。


ミステスさんの丁寧な添削、とてもためになりました。
嬉しかったです、ありがとうございました!

10/13^19:21[編集]

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SoftBank 812SH 123.108.237.9
ミステス

[16歳][男性]
評価:★☆☆☆☆

 
 はじめまして、ミステスです。二日連続での依頼なので、ちょっとびっくりしております。
 村上とは……村上春樹氏……または村上 龍氏のどちらかでありましょうね。お二方とも作品はほとんど拝見したことがないので、影響のほどは分かりません。率直な感想だけを運びます。


 では、和智様。
「緑の獣」を拝読しましたので、感想を運びたいと思います。

 むう……文章作法がしっかりしてるのは非常によいですね。しかし文章自体に何かすごく不安定なものを感じます……。起承転結ははっきりしてますが、結が微妙――いやむしろ何があったのか、その全権を読み手に投げ出しているので、ちょっと分かりかねます。
 ドアの向こうの正体を序盤に伏線として、軽く示唆する程度の描写が欲しいかな。緑の獣に対しても漠然としたイメージしか持てませんし、どこを評価してよいか困ります。たぶん村上春樹氏の方から影響を受けたのでしょう……。


 ◇文章について

>「おおか、えりにさい」
 緑の獣の言葉は、はっきり言うと不快で、わたしの肌に合わない感じです。

>腐りかけた水銀のような、妙な響き方のする声である。
『〜である』が影響を受けた解りやすい箇所ですね。不思議な表現は面白いです。

>「あああ。ひどい、ひいどい。わつちを覚えては、いませんのんか」
 んー……元彼という線がわたしの中には存在しますが、緑の獣が何の具象であるか認知できない以上、推測の域を出ませんからね……。

>その向こうにある影を、彼女はまだ見ていない。
 むう。いったい何がいるか気になる。わたしの読解力では作品の根幹を理解できなかったです。申し訳ない。


 ◇評価について

 独特な文章は評価できます。+5点。しかし内容を理解できなかったので……うーん。難しいです。

 一応、★は1つです。


 うまく感想を運べなくて、すみません。添削箇所も現段階ではないので、これにて終わりたいと思います。

 それでは、歪文失礼します。


10/13^18:04[編集]

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