お手軽投稿室〔感想〕

円生

[15歳][男性]
【いってらっしゃい】

「豊、テンが死んじゃったよ」
朝起きると母さんが真っ赤な顔して泣いていた。いつもと変わらない朝。太陽は昇った。
目覚ましだって、ちゃんと鳴った。
なのに猫のテンだけは、ぐったりと動かない。
まるでそこだけ時が止まってしまったかのように。
「そんな、なんで・・・昨日は普通に・・・」
僕がつぶやくと母さんはまたぐすりと鼻をすすった。目はもう真っ赤だった。大量のティッシュで覆われた鼻も、きっと真っ赤になっているんだろう。
「動物はね、最後の最後まで弱みを見せないの。・・・テンもそう。とっても強がりなの。だからどんなに辛くても、平気そうにいるのよ。」
僕はじっとテンを見た。テンはバスタオルにくるまれてソファの上に置かれている。安らかだった。とても死んでいる様には見えない。今にも目を開けて、こっちにすりよってきそうだ。
「それで、お父さんと相談したんだけどね・・・テンのお墓、うちの庭に作ろうかと思って・・」「 嘘。テンを埋めちゃうの?」
母さんがこくりとうなずく。
「だめだよ!そんな・・・そんな事したら本当にテンとさよならになっちゃう・・・」
僕はあわててソファの上のテンを抱き寄せた。
重く、冷たい。
テンじゃないみたいだ。テンではない、死の存在がそこにはあった。
「豊・・・これはさよならじゃないんだよ。」
不意に大きな腕が僕の肩を抱きしめた。父さんだった。
「テンはね、父さん達よりも先にお空に行くだけなんだ。先に行って、父さんや母さんや豊のことを見守ってくれるんだ。だから・・・」
父さんはそっと僕の腕からテンをおろした。死の感触はゆっくりと僕から離れていった。
「だから、テンがお空に行くための道を作ってあげなきゃいけない。だけど誰か一人でもそれを引き止めてしまうと、テンはお空に行けなくなってしまうんだよ。」
「空に・・・テンが?」「そう。さぁ、豊、こっちにおいで。お空への道を作ろう。」
父さんはテンを僕に預けると、ベランダから庭へと出た。
僕の腕へと帰ったテンからは、もう何の恐怖も感じられなかった。
いつものテンだった。
いつもの。
「ここにしようか。」
父さんは庭に一本だけ生えているキンモクセイの根元をスコップでザクザクと掘り始めた。
父さんを待つ間、僕の手のひらにぴちゃりと水が跳ねた。視界がぼやけていたから、その正体はすぐにわかった。
「 豊 」
「うん」
出来上がった穴に、僕はゆっくりとテンを横たわらせた。ここからテンは空へと旅立って行く。
空を見上げた。
雲一つ無い空。
これならテンも道に迷わず行けるだろう。
僕は目を閉じ、手を合わせた。

「いってらっしゃい。テン。」
▽追記

12/26^23:49[編集]

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ミステス



 こんにちは、ミステスです。


 うん、わたしが言いたいことは、ほとんどすべて伝わったようですね。
 逆に言えば、円生様にはその素質があると言えます。

>この言葉で、つい昨日の自分を甘かったと振り返ることができました。

 そう、いいじゃない。いい感じですよ。小さなことなんだけど、いっぱい悩んで、いっぱい考えて、そうして来たのですね。だからわたしも嬉しい。
 昨日の自分を客観的に「甘かった」と言えたあなたは、とても偉い。その上で自分なりの「今」の答えを出せた。素敵なことです。

 正直、人生相談みたいですがね(笑)。わたしもそういう言葉を掛けれるようになれた、くすりときます。

>僕の今の作品を書く上での能力はあまりに低い。しかしそれは今から少しずつ改善、成長すればいいと管理人様のお言葉ではっきりとわかりました。

 大切なことに、気づける。また、何かあれば、微力ながらお応えします。ふと思い出した時に、来てくれると嬉しいですね。
 おっと、出血大サービスしすぎました。これにて失礼します。では、また。


12/27^11:37[編集]

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円生

[15歳][男性]

まずは管理人様、忙しい時間を割いての批評、本当にどうもありがとうございました。

僕は今、正直言うと嬉しくて少し泣いています。今まで周りの人間からはもらえなかったような言葉を管理人様から的確にいただけたからです。
僕の周りの人間は、僕の作品を読んでも「おもしろいね」と言うだけで、ここをこうしたらいいのではないかという批評は一つもくれませんでした。僕に気を使ってかの事とはわかっていましたが、それでもどんなに自信のある作品を持って行っても、自信のない作品を持って行っても、同じ反応しか返してくれない周りの人間に、僕は悲しい気持ちになりました。
そのうち何が書きたいのか、何を書けばいいのか。 頭の中でぐるぐると悩むだけの日々が続き、実際に机に向かう事が少なくなりました。
たまに書いても、自分でもひどいと分かるような作品しか書けず、自信がなくなるばかりでした。管理人様の言うとおり、僕は焦っていたのです。焦りが焦りをよび、自分の文には何の魅力も無いのではないか、だから皆は何も言ってはくれないのではないか。そんな考えすら浮かびました。
まずは文をみがく努力をすべきだと、頭ではわかっていましたが、何が努力で、努力とは何なのか、この時はわかりませんでした。ただ今の自分がやっていることが努力とは到底思えませんでした。

そんな中で、管理人様の言葉は、すっと心に入っていきました。
まずは自分の作品を「作品」として認められたという喜びがありました。しかしなにより「覚悟」。この言葉には目を覚まされてしまいました。
この言葉で、つい昨日の自分を甘かったと振り返ることができました。
ぐるぐると考える前に、それなり「覚悟」はあるのか、一生を文に捧げる「覚悟」はあるのか。
そう自分に問うことで、自分の答えに自信が持てるようになりました。
僕の今の作品を書く上での能力はあまりに低い。しかしそれは今から少しずつ改善、成長すればいいと管理人様のお言葉ではっきりとわかりました。
貴サイトに出会えることが出来て、本当に嬉しかったです。これからも通わせて頂きます。
管理人様、投稿者様、長い文章、大変申し訳ありませんでした。
最後は管理人様、ご批評、本当にどうもありがとうございました。
失礼させて頂きます。

12/27^09:29[編集]

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ミステス

評価:★★★☆☆

 はじめまして、管理人のミステスです。わたしは今、とても嬉しい。そう思います。


 この作品への、率直な感想は、「一枚の、思い出の写真」です。わたしも愛犬との別れを描いた作品を持っていますが、このように素直な直情さはなかった。
 最後の言葉が「さよなら」ではなく、「いってらっしゃい」というのは面白いですね。そのように最後言える物語運びと、筆者様の感性に触れられるのが面白い。

 批評するなら、この作品は、あまりに拙いと言えるでしょう。文章作法や所々のロジックに失敗がありますからね、しかし、そんな、揚げ足取りする気にはなれない。
 うん、良い話でした。素直な作品。足りないのは、覚悟だけ、そんな気がします。


       ○ ○ ○


 さて、具体性を得ない感想で申し訳ない。しかしやはり、この作品には「覚悟」が足りない。きっと小説家志望と言いつつ、まだ全力でそっちに倒れていない。今出来ることをしようにも、何をしたらいいかわからない。そんな筆者様のイメージがちらつくのが原因でしょう。

 たぶん、わたしは、円生様が本当に求めている回答を示すことは、上手くは出来ない。だけど、言えますよ。あなたは今を、しっかり生きているじゃないですか。
 この作品からは、必死さ、焦りのようなものを垣間見れます。だから、ちゃんと「生きている」。大丈夫ですよ。夢には、じりじりと近づけばいいんです。
 焦る必要はない。一人で頑張る必要もない。だめなときは、人を頼ればいいのです。わたしは義侠心が強い人間だからこう言いますが、あなたが真摯に「覚悟」を決めて話せば、みんなもそれに応えてくれますぜ。だからわたしも応えます。


 本当はもっと励ましたいんですが、ここまで(笑)。それよりも正しくこちらの言わんとしてることが伝わるのか心配です。
 まぁ、そんな若いのに、一人で考えすぎですよ。大丈夫です。焦る必要もないし、一人で悩む必要もないです。
 さて……わたしにはこれが限界ですね。良い話を、聴かせてくれてありがとうございます。くれぐれも、焦らないように(笑)

 では、下手な感想になってしまいましたが、これにて失礼します。

▽追記

12/27^02:36[編集]

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