とんがりボウシと魔法の365にち 〜ほしぞら魔法学校より〜 Part3
135話*トメとてんま

135話*トメとてんま

「……商店街ってさ、いくつ店あるんだ?」

てんまが死にそうな目をしながら尋ねてきた。

「えーとね……多分6個だよ」

「……もう無理……あと5つもまわれねーよ……」

……てんまがこうなったのにはある理由がある。


――数十分前。
かめやにやって来たあたしたちは、トメさんにりんねが来ていないか聞いてみた。
すると、数時間くらい前におまじないに使うための材料を買いに来たという。

……というのはよかった。

実はトメさんは何故か異様なまでにてんまのことを気に入っていて、てんま曰く、てんまがかめやに来る度に長話をするという。

「……それでねぇ、あたしが学生の時……」

「と、トメさん、もういいよ。今りんね探してて忙しいから、今度聞くよ……」

……と、さっきからこんな感じなのだ。
てんまも大変そうだね……。

「おい」

「え、あ、何?」

「トメさんをなんとかしてくれ。オレの話を一向に聞いてくれないんだ」

「……あたし一人でりんね探しに行ってもいい?」

「殴るぞ」

「何で!?」

あたし悪いことしてないよね!?
というか、ただでさえゆうきに殴られまくってるんだからやめてよ!

「逃げるのはナシ?」

「やったことあるんだけど、次かめやに行ったとき、魔法で動けないようにして頬にキスされたことあるから無理」

「これはやっぱりてんまが残るべき」

「蹴るぞ」

さっきからひどいよ!
どんだけあたしのこと嫌ってるのさ!

ていうかトメさんいろいろすごいね!

「ていうか勝手にあたしたちで会話してていいの? 怒らないの?」

「オレの話をまったく聞いてないあたり、気付いてないから平気だろ」

うわ、この人ひどいね!
でも早くしないとホントに見つからなくなっちゃうし、夜ご飯もなくなってしまう!

どっちかっていうと、夜ご飯のほうが重要です!

「も、もう一回言ってみたら? さっきより大きい声でさ!」

「う〜ん、まぁそれしかないか……勝手にどっか行くなよ」

「ふぇ〜い」

めんどくさいなぁ。
大体、あたし関係ないのに……。

こんなこと言うと多分殴られるから言わないけど。

「トメさん!! あの! オレらりんね探さなきゃいけないんで!

もう行っていいですか!!??」

てんまが大きな声で言うと、ようやくトメさんは気付いた。

「もっと話したいことがあったんだけどねぇ〜。

それじゃ、キスしてくれたら行ってもいいよぉ〜」

……なんていう条件だ。
まぁあたしには関係ないのでさっさとトメさんにキスして別の店に行きたいところなんだけど。

「な、ちょ、は……!?

いや、あの、え!?」

「てんま、早く〜。あたしは見守っててあげるからさ〜」

「おまっ、ふざけんな! オレのファーストキスを何だと思ってるんだ!」

「……今までキスしたことなかったんだ……」

「どうせお前だってそうだろ!?」

はいそうですけど何か問題が?

……っていうかトメさん既にキス待ち状態なんだけどいいの?

「じゃあ代わりにお前がやれよ!」

「意味わかんない! てんまが指名されてるんだから、てんまがやるの!

あたしは関係ないっ!!!!」

「嫌だよ! こ、このさいこれで……」

と、てんまが出したのは……まさかの小銭。
この人さっきからひどい。

しかもホントにやってるよ。
トメさんお金とキスしちゃったよ。

「そ、そういうわけでオレらはいきます! さようならっ!」

そう言うとてんまはあたしの腕をひっぱってかめやを出て行った。

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