暦の間

♪時の旅人〜花の国〜
1/3ページ目

彼は時の間を駆け続ける。まだまだ旅は終わらずに、ただひたすらに前へと進む。そう…まるで運命の螺旋が回るかのように…ーー。



「……あれ?」
氷梗は辺りを見回した。まわりは一面の花畑で他には何もない。
「…やっちゃったなぁ…。出る場所を間違った…。でも一回『時渡りの力』使うと、すぐには移動できないしなぁ…。」
とつぶやくなり、木の根元に腰を降ろす。と、その時
「助けて下さい。」
という声が聞こえた。氷梗は辺りを見渡した。だが人影はどこにも見えない。
「こちらです。」
声が聞こえる方を見るがやはり人はいない。…と、花びらの下からひょっこりと小さな顔が覗いた。背中からは小さい羽根が見える。それは、かわいらしい妖精だった。氷梗は手のひらを差し出した。妖精がその上に乗る。
「ケガをしてしまって動けないのです。どうか私を仲間の元へ連れて行ってくれませんか?」
よく見ると、妖精は羽根の下の方が切れていた。氷梗はそれを見て、
「分かりました。僕でよければお送りしましょう。」
と微笑しながら言った。
「本当ですか!!ありがとうございます!!私、妖精のフェリーラと言います。よろしくお願いします!!」
と妖精の子がペコリとお辞儀をした。氷梗もあわせて、
「僕は氷梗と言います。よろしく。」
と返す。ゆっくりとフェリーラが微笑む。
「…で、皆さんはどこにいるんですか?」
笑って氷梗が尋ねると、フェリーラは、
「あっちです!!」
と花畑を指差した。氷梗は少し固まる。
「でも、あっちって花畑しかないと思うんですけど…。」
「大丈夫!!さぁ行きましょう!」
とフェリーラに言われたので氷梗は歩く事にした。…歩くと言っても『空』をだが。
「スイマセン…。私の魔力が弱いせいで迷惑をおかけして…。」
今…氷梗は自分を空中に浮かせ歩いていた。氷梗が答える。
「別にかまいませんよ。このくらいたいした事じゃないですから。」
肩の上でフェリーラがしゅんとなる。氷梗は指でフェリーラの頭を軽く叩いて、
「気にしないで下さい。」
と言った。フェリーラが少し笑う。
「でも驚きです。氷梗様が『空歩(くうほ)』を使えたなんて…。」
「たまたまですよ。」
と氷梗は答えた。…と、少し先の方で何か小さいものが飛んでいた。三人ぐらいだろうか…。話し声もかすかだが聞こえる。それは、こちらの存在に気づくなり猛スピードで飛んできた。そして、
「お前は何者だ?!」
「フェリーラ様を離せ!!」
「さもなくば俺達が始末するぞ!!」
などと口々に言って来て小さな剣を鞘から引き抜いた。
一人が氷梗に向かってスプレーを吹きかける。氷梗は突然のこの状況に驚き、バランスを崩しかけたが、何とか空歩を保つ。フェリーラが落ちかけたのを氷梗が助け、振り返った時にはもう目の前に剣が来ていて…
「お止めなさい!!」
突然響いた声に氷梗は思わずそちらを振り返る。剣を振りかざしていた妖精達の手もピタリと止まっていた。
そこには一人の女の妖精が浮いていた。
「この方は私の娘を助けて下さった方よ。武器をしまいなさい。」
女の妖精が三人に言い放った。三人は、徐々に顔が真っ青になっていき、
「申し訳ありませんでした!!」
と女の妖精に頭を下げてから氷梗の方に向き直り、
「大変失礼致しました!!」
と言うと花畑の中に消えていった。氷梗がぽかんとした表情で彼らを見送っていると、
「先程は大丈夫でしたか…?」
と話しかけられた。顔を上げると目の前にはあの女の妖精がいた。
「え、ええ…全然大丈夫ですよ。」
と氷梗は返事を返す。…とそこでフェリーラが肩の上で口をパクパクさせていることに気付いた。
「どうしました?フェリーラ。」
氷梗が尋ねると、フェリーラはゆっくりと女の妖精に向かって指差した。それからフェリーラが口を開きかけた時、
「お礼に我が里へおいで下さい。先程のお詫びをしたいのです。」
と女の妖精が先に話し始めた。氷梗は、
「そんな…大丈夫ですよ。」
と答えたが、女の妖精が、
「ちょっとの間でも休息なさって下さい。」
と言ってくれたので、氷梗は
「じゃあ、お言葉に甘えて…。」
と申し訳なさそうに笑って言った。
「では、行きましょう!!」
と宣言し、何やら杖らしきものを取り出した。それを氷梗に向けてふる。すると、いきなり氷梗のまわりに風が起った。空歩を風の中に取り込み、花も風と一緒に回り出す。
(これは…魔法の風…!!)
「気づかれたようですね。」
女の妖精は氷梗の顔を見つつ言った。氷梗も見つめ返す。徐々に自分の身体に氷梗は違和感を感じた。そっと手のひらを見つめてみる…と、
(手が…小さくなってきている?!…この術を使えるという事はかなりのやり手…。)
「貴方は一体…」
思わず声をあげる氷梗に、女の妖精はフフ…と笑いペコリと頭を下げ、
「私はこの『妖精の里』の女王、フィローネにございます。どうか手荒いご歓迎、お許し下さい。」
と一言いうと、顔を上げ持っていた杖のような物を氷梗に向けて振った。突然、風がパッと解かれた。
「へ?」
小さくなった身体で勢いよく降下していく。フェリーラも氷梗同様に一緒に落ちていった。
「えぇぇーーーっ!!!」
という二人の叫び声と共に…。
[指定ページを開く]

次n→ 

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。




w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ